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マニアック書評

2004年09月04日

ロッキー

いまさらロッキー、、、

2年間の休眠からさめて突如復活したマニアック書評。いきなりですがいまさらロッキーです。ロッキーといえば76年度のアカデミー賞で作品・監督(ジョン・G・アヴィルドセン)・編集の3部門を受賞した名作。デビュー間もない肉体派俳優シルベスター・スタローンが自分の書いた脚本で主演し、映画さながら一躍大スターになった出世作として知られています。

ストーリーは単純明快。やくざの集金係なんかをしながらその日暮らしをしている下町のチンピラボクサー・ロッキーに突如舞い込んだ世界チャンピオンへの挑戦権。人生最大のチャンスに果敢に挑戦するロッキー、、、これだけ聞くと、そしてさっと見た感じは典型的なアメリカンドリーム実現型のヒーロー映画なんですが、実はストーリーの奥深さにこそ注目すべきなんですよ。

アスリートならロッキーからメンタフを学べ!

実は最近突如としてロッキーを見た訳は、夏のホッケークリニックに使うメンタルタフネス教育ビデオに「ある部分」をどうしても見せたかったからです。それはロッキーが感じるアスリート特有の「ビビリ」を象徴する部分です。激しいトレーニングを乗り越えてついに試合前日を迎えたロッキーは試合会場に足を運びます。しかしその会場は今までロッキーが戦ってきた酒場ではなく巨大なアリーナ。そびえたつチャンピオンのポスターを見たロッキーはいきなり「ビビリ」を感じてしまいます。「勝てないよ」「俺には挑戦者の資格はない、、、」と恋人エイドリアンに告白するロッキー。これこそがアスリートが感じ、乗り越えなければいけない「ビビリ」そのものなんです。

ロッキーはそれを隠すことなく受け入れ「勝ち負けは問題じゃない。最後まで戦い抜くだけだ。最終ラウンドが終わっても立っていることができれば、自分がごろつきじゃないことを証明できる」と言って最後まで戦い抜く決意を表明します。あきらめず、怒らず、ビビリから逃げない、、、まさにメンタルタフネスの真髄をついた発言。素晴らしいです。

しかしこの殊勝なロッキーに対してエイドリアンときたら

ロ:「勝てないよ」
エ:「アポロに?」
ロ:「俺には挑戦者の資格はない、、、」
エ:「練習したのに」

と、まるっきり空気を読めない発言を連発。困ったやつです。

特典映像でさらに納得!

で、結局私はその場面を見せたいがためだけに25周年記念特別DVDをamazon.comで購入してしまったのですが、特典映像を見てさらにこの映画の本質に触れることができました。スタローン本人がロッキー誕生秘話を語る内容なんですが、まず驚いたのはロッキーのストーリーの下敷きになるようなボクシングの試合が実際にあったこと。それはあのモハメド・アリが無名の白人ボクサーを挑戦者に指名し、その挑戦者にダウンを奪われたという試合です。これはあの爆発頭で有名なプロモーター、ドン・キングが実際に「無名の挑戦者にチャンスを与えることで夢を売る」と触れ込んだ仕掛けだったことも今日見たドン・キングの自伝映画で確認されました。ま、さすがに映画のようにはいかず、最終ラウンドを待たずしてアリがその白人ボクサーをボコボコにしたらしいですが、、、

さらに、ロッキーが一般的な認識のように「アメリカンドリームを実現させるヒーロー」としてではなく、「アンチ・アンチ・アメリカンヒーロー」として作られたことにもちょっと感動しました。アメリカ映画は1960年頃までいわゆる西部劇やスーパーマン的な「勧善懲悪のヒーロー物」が主流でした。しかしベトナム戦争などの暗い影が社会に落ちてくると、「真夜中のカウボーイ」などに代表される「アンチ・アメリカンヒーロー物」、映画のジャンル的にはフランスのヌーベルバーグに影響されたアメリカンニューシネマが主流になります。それはつまり「実際、そんなヒーローなんているわけないじゃん。実はみんな夢を追っても成功しないばっかりのしみったれた人生送ってるんでしょ?」という悲観的かつ現実的な思想の映画だったわけです。

しかしスタローンはロッキーを書き進めていくうちに「そんなに人生を暗く考えるのもちょっとアレだぜ」と思い、チャンピオンに勝ちはしないが、最後まで戦い抜くことで少なくとも自己実現を果たす物語を完成させたというわけだったのです。だからロッキーでは取り巻きの人々も、かつて夢を果たせなかった老トレーナーとか、まったくパッとしないペット店の女店員とか、誰からも相手にされないその兄なんかが出てきたりして社会の現実を見せつつも、ロッキーの自己実現を通じてその人たちの間に絆が生まれていく、という温かみも見せているわけです。その辺りがバカ明るいだけのヒーロー物とも、やたら希望がない展開で主人公が惨めになるところに共感を覚えさせようとするアンチ・ヒーロー物とも違うところだったのです。

なるほど、名作と呼ばれる映画には理由があるんですね。
ま、シリーズ化すると全然ダメになっていくという先例を作った映画でもありますが。

それでは、、、エイドリア〜ン!!


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