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マニアック書評

2002年7月15日

「スターウォーズ」
シリーズ

なぜにスターウォーズ?

今回は書評じゃなくて映画評です。っていっても俳優の演技がどうとかではなくて、映画のストーリーとそのコンセプト評です。で、お題はエピソードIIの大ヒットで再々々々びブームのスターウォーズです。昨日「帝国の逆襲(特別編)」を久々に見て書こうと思いました。

さて、一見して宇宙物SF大作であるこのスターウォーズシリーズなんですが、子供向けでもなんでもなく非常にマニア度が高い映画として知られております。基本的には帝国軍隊共和国軍なんですが実は複雑なストーリー展開と、さまざまな魅力的なキャラクターが適材適所に配置されており飽きない作りになっている部分がポイントでしょう。

しっかし、、、私ヘローキィは恥ずかしながら数年前までシリーズを全然見ずして「しょせん勧善懲悪のアメリカンムービーだよ。スーパーマンと大差ないよ。テーマ曲もなんだか似てるし」と、ジョン・ウィリアムス作曲なら似てても当然と突っ込まれかねない浅はかさでした。

スターウォーズはポストモダンだった!

そんな私も大学院時代に授業で読んだポストモダン関係の書籍にスターウォーズの記述を見つけてから一気に開眼しました。ポストモダンとはだいたい1970年代以降の芸術・文化潮流で、「オリジナリティ、合理的、科学的」というモダニズムを打ち破り、「オリジナリティより過去からの引用、ある意味の非合理、脈絡のなさ」を売りにする芸術、文化の流れです。あ、私も素人ですので非常に適当に書いているので知りたい人はちゃんと専門書で読んでくださいね。で、このスターウォーズも実は80年代アメリカを代表するポストモダン映画だというわけなんです。「西部劇風のストーリーとSFの融合。ナチス風の衣装をまとった帝国軍、ギリシア風の衣装をまとった共和国軍、、、」なるほど、確かにこのシリーズはいろいろな文化や映画のイメージを素晴らしく組み合わせて作ったように見えます。有名なところでは黒澤明の大ファンであるところのジャージ・ルーカス監督が黒澤映画へのオマージュとしてそれっぽいシーンを挿入していたとか、オビワンは最初三船敏郎に頼んだけど断られたとか、なるほどって言うのがあります。それはそれなんですが、私が本当に感銘を受けたのは、「単純な勧善懲悪」と思い込んでいたストーリーの奥深さこそがこの映画の本当のポイントであったということなのです。

ストーリーを深読みすべし!

スターウォーズでは美術や映画の作りよろしく実はストーリーもポストモダン的な構造をしています。いわゆるサーガ(神話)的な構造をベースにしていますが、実はジョージ・ルーカスがストーリーの根幹に流そうとしたのは、ある種の東洋哲学的思想と、そして西欧で普遍化されている神話の融合だったのです。(この辺りから私の独断による創造ですので気をつけてください)。

まず「勧善懲悪」と思わせておいて、善の代表ルーク・スカイウォーカーの宿敵は悪の代表ダースベイダーです。そうなんです。「アイアム・ユア・ファーザーーーー!!!」この二人親子関係なんですね。で、ルークが恋したレイア姫は実はルークと兄妹。これっていわゆるオイディプス王の話そのものではないでしょうか?オイディプス王の話は有名なギリシア神話で知らぬ間に自分の父を殺し母と結婚してしまう悲劇です。フロイトが「父親殺しと近親相姦願望」を彼の心理学の基礎にしたことは有名な話です。正義のために乗り越え殺さなければならないのが自分の父親であったという不条理!この一種の西洋的神話のモチーフを中心に、東洋的な思想のモチーフが織り込まれていくのがこの物語の肝です。

まずは物語の再帰性から生まれる輪廻転生の思想です。簡単に言うと後にダースベイダーになるアナキン・スカイウォーカー(だからルークの父です)の境遇と、ルーク自身の境遇が見事に再帰しています。二人とも奴隷っぽい身分からオビワンに導かれてジェダイへの騎士になります。オビワンにもマスターであるクヮイ・ガンジンが付いてましたね、そういえば。で、この似たような境遇の親子二人の運命が一人は悪の代表へ、一人は善の代表へ別れていくのが問題です。

フォースこそが鍵(らしい、、、)

どうもストーリー全体を追って行くと、万物の根源的力である「フォース」を操るジェダイの騎士が、悪の騎士であるところのシスになり得るようです。このあたりがルーカスなりに東洋思想を消化し、表現したかったところのようです。権力、パワー、など、人々の運命を操るいわゆる大きな力が、心の平安の乱れから大きな悪の源になりうる、、、つまり普遍的な力が善になるも悪になるもそれを操る人の心しだいであり、運命しだいであり、境界は非常に小さいということです。

はあ、非常に分かり難くなってきましたが、要はオイディプス神話のモチーフと、善悪のフォースの争いが永遠に再帰していくという神話の構造を作りたかったみたいですね。なかなか手が込んでいます。面白いわけです。ルーカスさん自身もどっかの雑誌のインタビューで「現代アメリカには存在しない神話を創造したかった」と言っていたから上の話はだいたい間違っていないでしょう。西部劇のように勧善懲悪的な現代神話ばかりだったアメリカに、SF的ストーリー展開の中にポストモダンの手法を用いて東洋思想っぽいものを上手く埋め込んで彼の哲学を表現したかったのでしょう。東洋思想の影響を受けた元ヒッピーのルーカスさんとしては当然の成り行きだったわけですね、、、

日本では、、、

私はこの辺まで自分で勝手に想像して、さすが映画大国アメリカ!深い(のもある)ぜ!と感動していたのですが、日本ではどうかと考えたときに、やはりありました。こういう話が。MANGA大国日本だけにアニメの世界です。ズバリ、エヴァンゲリオンはポストモダン的手法をさらにバリバリに駆使して、オイディプス神話も絡めて、まさに日本的な現代神話の大作になっています。どういうことかというと、シンジとお父さんの関係の裏にアヤナミ・レイとエヴァは実はお母さんの肉体と精神そのもので、、、、ああ、また今度書きます。

こんな話に長々と付き合ってくださってありがとうございました。スターウォーズもエヴァももっと詳しい本とか解説ありますし、詳しい人もいると思いますので、内容が多少適当なのは大目に見てあげてください。

それでは。


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