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マニアック書評

2001年7月3日

「パパラギ」
(岡崎照男・訳,立風書房)

「パパラギ」とは南太平洋一帯で使われている「白人」を意味する言葉だそうです。 西欧を中心とする文化圏の国々は過去数世紀の間に世界中の国々に「文明化、啓蒙」と称して、自分たちの文化を押し売りしてきました。 私たちの生活がその恩恵を被っていることは否定しようがありませんが、それによって失ってしまったものが多いことも19世紀後半から20世紀にかけて見直されてきたことです。

こんな感じの文明批判は過去にもそれこそ腐るほどあったわけです。ソローの「森の生活」なんかもそうですし。 しかしたいていの批判は「文明圏」に属する人々の自己批判であり 「自然に即した生活をして、失われた心の豊かさを取り戻そう」 と言われても 「でも明日から携帯無しで生きられるんかい!」 と屁理屈をこねたくなってしまいます。

逆に文明化されていない人々の文明批判はほとんど私たちの耳に届かないばかりか、非論理的、非文明的にしか聞こえないと無視されてしまうことが多かったようです。 酋長ツイアビがこの本の中で発する文明化に対する警告は、素朴ながら非常に鋭く、読んでいてハッとさせられること請け合いです。

「時間はどう頑張っても太陽が昇ってから沈むまでしかないのに、パパラギはそれを時計で切り刻んであくせくしている」

なんて言われると、、そ、そりゃあそうだぜ、、です。 極めつけは

「考えるという重い病気」

です。

「考えること、考えたもの、思想−これは考えたことの結果である−は、パパラギをとりこにした。彼らはいわば、自分たちの思想に酔っぱらっているようなものだ。日が美しく輝けば、彼らはすぐに考える。 「日はいま、なんと美しく輝いていることか!」 彼らは切れ目なく考える。 「日はいま、なんと美しく輝いていることか!」 これはまちがいだ。大まちがいだ。馬鹿げている。なぜなら、日が照れば何も考えないのがずっといい。かしこいサモア人なら暖かい光の中で手を伸ばし、何も考えない。頭だけでなく、手も、足も、腿も、腹も、からだ全部で光を楽しむ。皮膚や手足に考えさせる。頭とは方法はちがうにしても、皮膚や手足だって考えるのだ。」

うーーーーん、、そうか、、 私はたぶん高校生のときにこれを読んで猛烈に感動しました。 我々はおそらく後戻りのできない文明の中に生きているので、いまさらどうしろといわれても、根本的な解決にはならないのですが、何かにつけて「意味」を見出し自分たちの見出した意味の中で発生する「価値」にしか価値を見出せない文明は、やはり病んでいるのでしょう。 スポーツの楽しみ方にしたってそうです。体で楽しむことを、思い出さずして、何のためのスポーツでしょうか、、、

うーん、これって考えすぎでしょうか? ところでこの本、発売当事大変な反響だったようで、帯カバーにはこんな宣伝文句が書いてあります。

「パパラギ」は全国でさまざまな波紋を巻き起こしています。
-立教大学法学部のゼミナールで「パパラギ」を基礎文献として採用
-東京大学・生協書籍部で「パパラギ」が週間ベストセラーの5位になる」

なるほどなるほど、、、でも、

-東京・田園都市線のたまプラーザ駅近くに開かれたスナック「パパラギ」が盛況

っていうのは、だいぶ違うような気がするんだけど、、、、 今でもあるのかな「スナック・パパラギ」??


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