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Q7:スタイルによるキーパーの防具の選び方,またサイズ合わせは?(99年7月8日)

Q:

スタイルによるキーパーの防具の選び方,またサイズ合わせは?

医大生

A:

それではキーパーの防具一般の選び方とサイジングについてお答えします.
始めに,現代のキーパーの防具は

「体よりもむしろゴールを守るように作られています」

結論から言えば,私は,他の人が何と言おうと,

「使い勝手に大差がなければ,大きければ大きいほど良い」

と思っています.
例えばレガースです.私はよくゴーリークリニックでゴーリーの父兄の方から「うちの子は膝がかたくて,バタフライしても股下が閉まらないんですよ」という相談を受けますが,そういう子供の着けているレガースの,まあ,半分以上が短か過ぎです.今でも膝上ぎりぎりの長さのレガースを着けている人たちがたくさんいますが,それでバタフライをして股下を閉めようというのが無理というものです.レガースの膝上は最低でも13-15cmは必要です.長いレガースはスタンドアップスタイルにはじゃまになって不向きという説は,知ったかぶりの知識の最有力候補の一つですが,今の時代,スタンドアップスタイルでも場合によってはバタフライセーブを使うのが常識です.使い易さで止め易さを犠牲にしてしまっては本末転倒です.NHLでスタンドアップスタイルとされている,リクターやヴァーノンを見て下さい.そりゃジョセフ(NHLで膝上がもっとも長いのでは...)やフュアやロワほどではないですが,ちゃんと膝上がそれなりに長いレガースを使っています.反対に,ヘクストールなんかは,未だに膝上ぎりぎりのレガースを着けていて,,,,やっぱりバタフライしたときに股下がスカスカです.最近廃部になったF河電工のK藤さんが,引退前の2年間積極的にバタフライスタイルに取り組んでいまして,私もその手伝いをさせていただいていました.その彼は,「エディのレガース(33インチ)は膝が閉まらない!」と悩んでいました.ある日意を決してついにH名(当時新人)の大学時代のレガース(34インチ)を着けてみたところ,あっという間に楽々股下が閉まるようになり,「ああ,俺はたったこれだけのことでどれだけ悩んでいたことか!!」と愕然としていました.だから皆さん,長くて良いんですよ!!しかし,余談ですがそのレガースの持ち主であったバタフライスタイルで有名なH名君は,高校時代180cm以上の長身でありながら32インチというちんちくりんに短いレガースを着けていたことを「ああ,あんな短いのでよくやってたよなあ」と回想していたことにはもっと驚かされました.ちなみに私は身長が170cm以上で,普通の足の長さの人であれば34インチ以上をおすすめしています.まあ,大きければいいというわけではないので,150cmにも満たない子供が大人用の34インチとかは使えません.「使い勝手に大差がないこと,または最初は不自然でも慣れれば平気そう」
な範囲の大きさです.
さて,スタイルとレガースの形についてです.最近ではちまたに「バタフライスタイル用」「スタンドアップスタイル用」「ハイブリッド(その中間)用」と,様々なスタイルに対応したレガースが売られています.メーカーによってコンセプトはいろいろありますが,主な特徴は以下の通りです.

<バタフライスタイル用>

  • 足の開きが大きい基本姿勢からバタフライに移行しやすいように,レガースの形状が,前から見ると,やや内側に折れているようにデザインされている.バタフライの形になったときに体にストレスがかかりにくいように,縫い目の入れ方などが工夫されている.またつま先内側は大きくカットされており,足を開いて構えてもじゃまにならなくなっている.
  • 膝上の部分のカットが工夫されており,ファイブホールが閉まりやすくなっている.
  • 衝撃がかかりやすい膝の内側にパッドが増量してある.
  • 膝上は当然長めです.
<スタンドアップスタイル用>
  • 足の開き小さい構えに対応して,真正面から見るとほとんど長方形にデザインされている.
  • 膝上はあまり長くない.
  • あとは,,,いわゆる昔ながらのデザインとしか言いようがありません.

<ハイブリッド(その中間)用>

自分のスタイルに合わせて選びなさいと,優等生的な回答をしても良いのですが,,,,ここはあえて,

「バタフライを多用する人にはスタンドアップ用のレガースはえらく使いにくいことがあるが,スタンドアップスタイルの人がバタフライ用のレガースを使ってもあまり違和感はないのではないと思う」

と言わせていただきます.
また,レガースを着けたときに膝上にできる隙間を守るニーパットも非常に重要です.足に直接着ける型と,パンツに付いているものがあります.パンツに付いているものの方がずれにくいらしいですが,まあどちらでもいいので着けましょう.
 

さて,レガースと並んで重要なのが,ショルダー(&ボディ)パッドです.レガースとショルダーでキーパーの見た目の大きさの大半が決定してしまいます.これも使い勝手が同じ,または慣れることができる範囲ならば「大きい方がいい」です.肩の部分や,肘の部分の大きさは意外と見た目が違ってきますし,当然シュートに対する表面積が違ってきます.		
そしてパンツです.皆さんゴーリー用のパンツはいていますか?腹部や内腿にパッドが付いていたりして使いやすいので是非使って下さい.それより,ちゃんと大きめのパッド使ってますか???どーも小さいパンツのゴーリーが多いみたいで,下半身がとても小さく見えます.これも動きにくいほどでない限り大きめをおすすめします.というより,キーパーの場合ある程度余裕のあるサイズのパンツの方が動きやすいと思います.
さて,やっとグローブです.グローブには実はモデルによってはMとLがあります.今までの話の通り,不自然なほどでなければ大きい方がいいでしょう.手にきちんとフィットする範囲ですよ.念のため.それから同じサイズでもモデルによってグローブの表面積はいろいろです.ハンドリングが好きなキーパーは小さめのグローブを使いたがりますし,やたらにでかいグローブを使いたいという人もいます.まあ,ハンドリングが得意で小さめのグローブを使いたいといっても,それでキャッチング技術が並以下しかない人は,おとなしく大きめのグローブで失点を減らすことに専念することをおすすめします.パックを止めることを優先に考えることが無難です.ちなみにグローブの大きさは形はスタイルとはあまり関係がないような気がします.使いやすい範囲で大きめ,これが私のおすすめです.だから手の小さい人なんかは,フィットしないLを買うよりも,Mでも他のグローブに比べて表面積が広いものを買うのがいいと思います.

ブロッカーについて.一昔前にはやった変形ブロッカー(下の方が横に出ていたりねじれたりしているやつ)もNHLでの規制強化の影響を受けて見られなくなってきました.ですからどれも大差ありません.見るべき点はハンドリングのしやすさ,表面積の大きさの多少の違い,程度です.おっと,パドルダウンが好きなあなたには,パドルダウンのしやすさもポイントですね.パドルダウン時に氷につく部分が斜めにカットしてあるやつが使いやすいですよ.
さて,ここからが佳境です.

ジャージについて.皆さん小さすぎです.ゴーリーカット(肘の部分が太くなっている)か,それがダメなら大きめのジャージにしましょう.動きやすいですよ.

プロテクティブ・カップについて.急所ガードです.あるクリニックで防具の話をしたときにキーパーなのにプレーヤー用のカップを使っている人が意外にも多くて驚きました.いざというときには失うものも大きいので,しっかりとしたゴーリー用を着けましょう.女性の方も男性用と同様のカップというかサポーターが存在します.こちらも結局当たると痛いらしいので,着けましょう.ちなみにカナダで女子のゴーリーが着替えているところを目撃しましたが,別に覗いたわけではないのですが,彼女はなんと普通の男性用のゴーリーカップを着けていました.まあ,機能的にも外観もたいして変わらないので別に変ではないのですが...
最後にマスクです.NHLでもハシェクを筆頭として,いまだにヘルメット+マスク型のゴーリーもいますが,さすがに今の主流はいわゆるゴーリーマスクです.ヘルメットタイプは視界がいいという利点がある反面,やはり保護能力では劣ります.これはゴールではなく体を主に守る唯一の防具なだけに,防護力は譲りたくありません.ゴーリーマスク型は,重い(高いものは軽い.当たり前ですが),視界がやや狭い感じがする,暑い!という欠点を持ちますが,やはり防護力は高く,何より見た目が格好良い.これけっこう重要です.さらに,ゴール裏を見るときなどに首を動かすときにマスクのブレがヘルメットに比べて少ないので,気にならない,という意見もあります.さて,NHLや日本リーグで見かける,目のところが三角に空いた見やすそうなワイヤーが入ったケージ,いわゆるキャットアイ・タイプですが,これはアマチュアでは禁止されています.三角の隙間が,プレーヤーのスティックが入るくらいの大きさだから,まあ仕方がありません.しかし,これを補う新兵器がEddyから発売されました.「キャットアイ・コンボ」と呼ばれるもので,三角の穴の背後に強化プラスティックが張ってあるらしく,視界も良好で,しかもアマチュアでも承認される(見込み)という優れものです.日本にはまだ入っていませんが,今後見逃せない逸品です.ちなみにネックガードは必需品です.たまにしか当たりませんが,当たったら最後.スケートなんか入った日には,選手寿命のみならず,寿命に関わります.
そうそう,スティックを忘れていました.意外と気にしてないかも知れませんが,スティックとブレードの角度,そしてパドル(太い部分:正式にはスケープというらしい)の長さが重要です.自分の基本姿勢をとり,スティックを置いたときに,スティックのブレードがトウ(先)やヒール(根本)に偏ることなく真ん中で氷に接するような角度とパドルの長さを持ったものを選びましょう.ちなみに先のH名君は,上体が前のめりになり過ぎるという悪い癖を,パドルが1インチ長めのスティックを使うことで改善しました.ブレードのカーブについてです.曲がっていたりオープンになっていたり(ブレード面が上向きにねじれている)のはハンドリングに適していたりしますが,極端なものは避けた方がいいでしょう.自分の技量に応じて,スティックセーブがやりにくくない程度の曲がりが良いんじゃないでしょうか.あと,パドルダウンのときにシャフトの部分も氷に付くようにシャフトがグニャリと曲げてあるChristianの「カーティスカーブ」モデル=ムーグモデルなどはパドルダウン好きのキーパーには良いかも.意外と握力のないキーパーにも「カーブのところが握りやすくていい」と好評だったりします.


<7/12追加>

しまった,スケートのことを忘れていました!!スケートのエッジは頻繁に研磨しましょう.これ,常識です.「キーパーはあまり研磨しちゃいかん!」というのは未だに信じられている昔話です.が,カナダでもそれを信じていたキーパーが結構いたくらいですから,,,仕方ありません.特に足の構えが広い人は研磨をしっかりとしていないと動けません.っていうか,すばやく動くためには研磨しておくのは絶対条件です.プレーヤーと同じか深めくらいの溝を入れた方がいいです.慣れてない人は少しずつ溝を入れていけばいいでしょう.「研磨していないスケートでプレーすることは,パンクした自転車で走るようなものだ」と,誰かが言っていましたが,その通りです.
ああ,ずいぶんと書いてしまいました.ほとんどマニアの領域ですが,キーパー道はまた防具道でもあるのです.精進して下さい.
なお,防具について,相談,購入などのお問い合わせは,若林弘紀にどうぞ.
それでは.

(回答者:若林弘紀

 

 

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