それでは1対1のセオリーについてお話しましょう。1対1でDFを抜き去るときに守るべき原則は主に4つあります。
- チェンジ・オブ・ペース(スピードの変化)
- ラテラル・ムーブ(横移動)
- フェイク
- シールディング(パック・プロテクション)
<チェンジ・オブ・ペース>
よく「スピードで抜け」と言われますが、よほどのスピード差がある場合除いて、物理的にスピード勝負で抜き去ることは大変です。自分が高速で相手に向かって行けばいくほど、相手も下がり気味で守るだけのことです。本当に必要なのは「抜き去るための加速」なのです。バックスケーティングでフォアスケーティングよりも早く加速できるわけがありませんから、わざとディフェンスがついてくることができる8割のスピードでディフェンスに接近し、ディフェンスのチェッキングレンジ(チェックできる範囲:下の図のグレーの領域)からさらにスティック1本分くらい離れたところから猛然と加速して横をすり抜ければ、まさに「スピードで」抜けます。フェイントなんていりません。しかし当然のことながらうまいディフェンスはスピードの変化への対応もうまいのです。スピードだけで抜くのは、あなたがブレかカリヤでなければ限界がおとずれます。
ということで次に考えなければいけないのがラテラル・ムーブ、そしてフェイクです。
<ラテラル・ムーブ>
加速するときに横に動くと、ディフェンスはさすがに付いて行くのが大変になります。バックしながら大きく横に移動して、バランスを崩さずにチェックできるのはかなりの上級テクですから。
加速しながら思い切って真横にパックと体を動かしながらディフェンスの横をすり抜けてください。
<フェイク>
さて、さらに上級のディフェンスになると、素直に横に動いて加速しても付いてきてしまいます。ここから先はフェイク、すなわちフェイントが必要になります。
フェイントには相手と自分の距離によって、だいたい2種類を使い分けます
<シフト>
自分が相手のチェッキングレンジ(グレーの領域)の外にいるときは相手の相手のスティックの届かない範囲でパックを横に動かす、シフトを使います。
図1はシフトの中でも代表的なシングルシフトです。
フォアハンド・シングルシフト(オレンジのライン)はフォアハンド側にパックと肩、頭をすばやく動かして一瞬動きを止め、ディフェンスがフォアハンド側に動きかけたところで今度はバックハンド側にパックを真横に大きく動かし、加速して抜き去ります。
バックハンド・シングルシフト(ブルーのライン)はその逆です。
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図1:シングルシフトで抜く
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どちらの場合も、シフトをしている間にパックがチェキングレンジに入ってしまうと相手にカットされてしまうので、チェッキングレンジから十分に距離をおいて行うことがポイントです。
<Dトライアングル・アタック>
相手のチェッキングレンジに入ってしまったら、シフトで抜こうと思ってもパックをカットされてしまいますから、今度は相手のスティックのブレード、そして両方のスケートからなるトライアングル(グリーンの縁取りをした三角形)の間にパックを通して抜く、Dトライアングル・アタックをしなければなりません。
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図2はDトライアングルアタックの代表、スリップ・アクロスです。
フォアハンド・スリップ・アクロス(オレンジのライン)は相手のチェッキングレンジ内から、フォアハンド側、相手のスティックのシャフトの横辺りにパックを動かします。同時に肩、頭をすばやく動かして一瞬動きを止め、ディフェンスがフォアハンド側に動きかけたところで今度はバックハンド側にパックを真横に大きく動かし、相手のスティックのシャフトの下を通し、逆サイドでそのパックを拾って加速して抜き去ります。
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図2:スリップ・アクロスで抜く
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バックハンド・スリップ・アクロス(ブルーのライン)はその逆です。
ポイントはスティックの下にパックを通すときに、なるべく真横に動かすことです。斜め前に動かしてしまうとディフェンスの足に当たってしまうことがよくあります。
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<シールディング>
せっかく相手を抜き去りそうになったのに、追いすがる相手のスティックや腕にやられてしまうことはありませんか?
抜き去るスピードと同時に必要なのがシールディング、すなわちパックを守る技術です。
図3はフォアハンド側にディフェンスを抜き去ろうとしながら自分の体を相手とパックの間に入れてパックを守っている(シールディング)しているところです。肩、腰、背中、ひざ、腕を使ってパックの安全を確保しましょう。
シールディングはホッケーばかりでなくバスケ、サッカー、その他ほとんどのオープン(対人型)球技に見られる技術です。研究しましょう
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図3:シールディングでパックを守る
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練習方等についても言及して欲しいとのことですが、、、まずはこの原則を頭に入れて1対1を行ってみてください。ドリルはあなたの代わりに練習をしてくれません。原則を理解して取り組むことで初めて効果が出るのです。逆にいえばどんな良い練習でも、原則を理解し、実践しようとしない限りは意味のないものになってしまいます。
それでは。
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