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煮え切らないプレーヤーさんは実は都内某高校チーム所属なんですが,高校生にしてなかなかいい目の付け所です.まず「試合中の足の速さというのは長い距離を速く走る事よりも始めの三歩をいかに速く走るか」,,,その通りです.これについてはQ39で解説します.とにかく結論から言えばホッケーのゲーム中の足の速さとは,まさに「はじめの3歩」であり「ターンやストップの鋭さ」,つまりは俊敏性なのです.じゃあ一体どうすればゲームの中で俊敏性を高めることができるのか?
実は,足の速さと長距離を走る速さが違うように,単純な俊敏性とゲームの中での俊敏性は全然別物です.たいして俊敏じゃなくてもゲーム中ゴール前でやたら素早くリバウンドに絡んだりする人もいます.例えば少し前にNHLを引退したディノ・シサレリは見るからに下手なスケーティングでしたが,ゴール前の泥臭い上手さだけで通算得点の上位に輝いています.逆に風のように疾走しながら全然効果的な動きができないプレーヤーもいます.NHLドラフト史上最大の失敗と噂されるA・Dなんかがそうで,とにかく速いんだけど結局全然活躍できませんでした.
NHL屈指の貧弱な体で誰にも及ばない偉大な記録を残したグレツキーは「私はパックがあるところではなく,これから動くところに向かって動いているだけだ」と言いました.
あらゆる運動には
「情報の入力」→「情報の判断」→「身体への出力」
という過程が含まれています.例えば「ゴール前に出たリバウンドを相手より速くシュートしてゴールする」には単純に考えて
「味方の動きを見て(入力),リバウンドを予測し(判断),パックに飛びついてリバウンドを叩く(出力)」
という過程が含まれているのです.普通はこういうプレーを見ると「リバウンドへのよりが速い」=「足が速いからだ」と考えてしまうのですが,どんなに足が速くても,あらかじめ味方のシュートをよく見て,リバウンドの出るところを予測して動かなければ素早く動いてリバウンドを叩くことなどできません.天才と呼ばれるプレーヤーはたいてい入力と判断の部分が異常に優れているのです.
さて,質問では「ダッシュの練習の時は速く走れる」そうですので.身体への出力の部分は問題なさそうです.
ということは鍛えなければいけないところは「入力と判断」の過程です.サッカーの中田が試合中何100回も首を振って周りを見ていることは有名な話です.練習中から常にパックと周りの動きをよく見ることで状況を把握しましょう.そして情報収集を元に次に起きるプレーを予想し,事前にプレーの準備をしておけばあなたの足の速さが活きるはずです.ビデオなどを見るときもパックの動きだけでなく周りのプレーヤーの動きを把握し,次のプレーを読んで,自分ならどう動くかということを考えることをお薦めします.特別な練習をしなくても意識さえしっかり持ってすれば,ほとんど全ての練習が素早いダッシュの練習になるはずです.
それでは.
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