Question

Q6:オールシーズンリンクの少ない地域で夏場の「空白の2ヶ月」を埋めるには?

関西は夏場の練習がかなり難しく6、7月はほとんど氷の上では練習できません。そこで何とか空白の2ヶ月を埋める練習法があれば教えてください。
(神戸のジュニアチーム関係者)

Answer

私も関西ホッケー(大阪)出身者ですので、事情はよく分かります。聞くところによると、最近はリンクの閉鎖が相次ぎ、状況はますます厳しくなっているとか。

さて、最初に確認しておかなければならないのは、氷上練習そのものの代替練習は不可能に近いということです。どんな競技でも同じですが、筋力トレーニング、イメージトレーニング、ヴィジョントレーニングその他の陸トレというか、オフシーズンに行う練習は、上手くすれば非常に有効な補助的トレーニングになります。しかし、結局は氷の上でやるスポーツは氷の上でないと出来ない要素が圧倒的に多いので、陸トレだけでアイスホッケーの練習の代替は出来ません。まあ、これは当たり前のことですよね。

それでは一体その空白の2ヶ月間をどう過ごせばいいのか? 答えはもちろん陸トレ、ということになるのですが、一体どんなトレーニングが有効なのか?? ここでは対象を小学生レベルとして考えましょう。小学生の間は、いわゆる運動神経がもっとも発達する時期で、技術レベルを高めるのにこれ以上いい時期はありません。ここでいう「技術レベル」とは「速く、強く」ではなく「上手く、器用に」なるという意味です。ですからオフシーズンにもっとも大切なことは、サッカーやバスケットボール、ハンドボール、野球など、他の競技を通して、基本的な運動能力を高めるということであると思います。

私は日本における野球などのホッケーより専門化された競技が、冬場のオフシーズンに「体力づくり」と称して小学生にまでばかばかしい長距離の走り込みなどをやらせていることについては、反対です。というより無意味です。何よりも、楽しくありません。苦しませればいいというものではありません。北米のスポーツ界では(もちろんカナダのホッケー界も)、シーズンスポーツ制をとっています。(何でも「向こう」のスポーツと比較すればいいというものではありませんが、ホッケーの場合は明らかに競技力に差があるのですから、参考にするべき点は多いのです)

例えばカナダでホッケーをしている子供たちの多くは、4月から8月までのかなり長期に渡って、ラクロス、野球、サッカー、陸上、ゴルフなどの別のスポーツを行っています。子供によってはホッケーシーズン中であってもバスケットボールやフットボールと並行してホッケーを行っている場合もあります。別のスポーツを通して育ち盛りの運動能力を活発に刺激してあげることが、ホッケーを上手くなるためにも最も有効だと思います。

年齢が上がるにつれてスポーツを専門化していくのは当然のことですが、それにしても、オフシーズンは、感触を忘れない程度に氷に乗り、後は陸トレで(年齢が上がってきたら)今度は筋力や体力を付ける、またメンタルトレーニング、ヴィジョントレーニングなど、普段出来ない練習を取り入れることが重要になります。「一番いけないのは練習のしすぎ、次にいけないのは練習のしなさすぎだ」と誰かが言っていましたが、オフには他のスポーツやトレーニングを取り入れてバランスよく身体能力を高めることが大事だと思います。

実は日本でホッケーが盛んな北海道や八戸でも、夏場はそれほど氷がないのです。ですから彼らも陸トレか別のスポーツに精を出しているはずです。まあ、確かに彼らと関西のホッケーとでは冬場の練習量が違いますから、心配になってこういう質問がでてくるのだと思います。それなら夏場はインラインホッケーをするというのも一興です。インラインとアイスはかなり違うスポーツですが、子供の柔らかい頭ならば、インラインからでも十分アイスに必要な要素を磨いていくことが出来ます。特にスティックハンドリングやパスワークなどはほとんど変わりません。バランス感覚も磨かれますし、いいと思いますよ。

さて、ややこしくなってきたのでまとめます。

  1. 氷上練習の不足は陸トレだけでは補うことは出来ない。
  2. しかしながら、小学生のうちは、むしろ夏場に他のスポーツをすることで総合的な運動能力を磨くことの方が大事である。
  3. 年齢が高くなるに従って、オフシーズンのトレーニングもホッケーに専門化させていく。しかし、他のスポーツやトレーニングの要素を取り入れていくことは、依然として有効である。それは、心身のリフレッシュを図り、バランス良くトレーニングする、ためである。
  4. シーズン中でさえ氷上練習時間が少なく、全体として専門トレーニングが不足している場合は、インラインホッケーなどのアイスホッケーとよく似たスポーツで専門的練習をある程度補うことができる。

最後に、オフシーズンに、自分たちの試合のビデオや、NHLなどの試合のビデオを見て、イメージトレーニングをすることも大変有効だと思います。

それでは。