Question

Q5:ルール変更後のニュートラルゾーンでのFWの動き方は?

ルール変更後のニュートラルゾーンでのFWの動き方(縦パスのもらい方)は?
(久留米大学チームのプレーヤー)

Answer

(註:この質問は1999年6月23日当時のものなので、今からすると相当懐かしい質問となっています。)

「ルール変更後」つまり、センターラインパス廃止(っていうか解禁ですよね?)への対応策ですね。実は私は昨シーズンカナダに居たため、センターラインパス廃止が実際のプレーにどのように影響したのかあまり観察する機会がありませんでした。「え?ルールって国際的に改正されたんじゃないの?」と思いきや、カナダはマイナーホッケー(子供たちのホッケー)からジュニアメジャーに至るまでNHLのルールを基本にしていますので、NHLでセンターラインパスが生きている以上はそれに従って、ルール変更の実施を先送りにしたのです。ちなみに来シーズンからはティアーII(ジュニアメジャーの下)でセンターラインパス廃止の実施に踏み切るそうです。

というわけで、私も日本に帰ってきてから興味深くルール改正の影響について調べてみたのですが。。。やはり、日本リーグや関東大学1部リーグなどの強豪チームは上手くルール改正を利用した展開の早いプレーをしていましたね。

センターラインパスがなくなったということは、早い話がニュートラルゾーンをいっぱいに使った長い縦・斜めパスが可能になったということです。典型的なのがディフェンディングゾーン深くからの長いブレークアウトパス(図1)とリグループからの速攻です。フォワード(F)はディフェンス()に気づかれる前に、ディフェンスの背後や、センターアイスのオープンスペースに走り込み、長いパスをもらって速攻を仕掛けます。これは相手チームのディフェンスの能力が低ければ低いほど効果的です。なぜなら今までディフェンスの背後で相手をルール上くい止めてくれていたセンターラインが、無効になってしまったからです。相手の攻撃を読めないディフェンスや、読めていてもバックスケーティングで速く下がれないディフェンスは、自分の裏をがんがん攻められることになってしまいます。
といっても長いブレークアウトのパスを使うためには、味方のディフェンスにも相当のパス技術が必要です。下手をすればど真ん中で相手にカットされてしまい逆襲を食らいます。そうです。その時、フォワードは通るはずだった縦パスに向かって先走っていますので、少なくとも一人は足りない状態で逆襲を食らうことになるんです。というわけで、この手のプレーはうまくいけば大チャンスですが、下手をするとピンチにつながります。ディフェンスのパス技術、そしてフォワードの足の速さとよく相談してからしっかりと練習して下さい。無理に真ん中を通すよりも、ボードに当ててパスを通す方が安全かもしれませんね。

図1

さて、意外と気づかれにくいのが、2ピリの選手交代、ペナルティ解除を利用したロングパスです。2ピリは自分のベンチが相手ゴール側にありますので、選手交代を一人だけ故意に遅らせて、相手が自刃に攻め込んでいる隙にディフェンスの裏にちゃっかりと出てしまうのです。(図2)これならディフェンスに気づかれる心配はあまりありません。まあ、その間自分のチームは4人で守っているんだから、これもリスキーですが、、、試合終盤にどうしても1点欲しいときなんかに使ってみて下さい。

図2

最後に交代のタイミングを利用したロングパスです。この例では相手()にダンプインされたパックを(1)ゴーリーが取り、ベンチと逆サイドのフェンス際目一杯ブルー寄りにいるフォワードにロングパスを出しています(2)。こうして相手が交代して守備の体制を整える前にフォワードがパスを受けて速攻するのです。学生レベルに限らず、選手交代のタイミングが悪いチーム相手ならば使える手です。ちなみにこれはルール改正前から常識的に行われていましたが、ルール改正でより威力が増したプレーです。あ、もちろんゴーリーが無理してロングパスを通す必要はありません。っていうかこんな長いパスを通せるゴーリーはそういません。ディフェンスがやるのが一番確実でしょう。

図3

さて、以上ご紹介したプレーは、基本的にロングパスを使うため、高度なパス技術が必要になります。また、選手交代を利用したプレーなどは、ベンチにいるコーチやプレーヤーが的確な判断をしないととても成り立ちません。反面、新しいプレーや選手交代などに無頓着なチーム相手だと、おもしろいように決まるはずです。しっかり練習して臨んで下さい。
なお、これらの手は、当然相手も使ってきます。その時にどう守るのか???ディフェンスは大変ですね。これはまたの機会に書きます。

それでは。

(参考:アイスホッケーマガジン1998年10月号)