Question

Q35:強力なスラップシュートを打つコツは?

スラップシュートがある程度狙ったところに飛ぶのですが、今ひとつスピードがでません。どうすれば、もっと早いスラップシュートが打てるようになりますか??
(南国アイスホッケー部、オヤジになりたてのプレーヤー、他)

Answer

よく「重い、強いシュートが打ちたい」と言う人がいますが、重いシュート、強いシュートとは要するに速いシュートのことです。シュートのスピードを上げるために一番重要なのは、スティックの振りのスピードを上げることです。そして、振りのスピードが最大の時に振りの速さをパックに伝えること=パックをスティックのブレードに乗せることです。つまり、スティックを振り抜き、パックがスティックのブレードを離れる直前に振りのスピードが最大でなければいけないということです。 スラップシュートの場合は振りの速さに加えてスティックのしなりの反発を利用してパックに力を加えます。 右の写真は理想的な(前進しながらの)スラップシュートの瞬間をとらえています。

Slap shot Photo 01

まず、インパクトの瞬間のパックと体の位置関係について。振り下ろしたスティックがパックに当たるとき、パックは軸足(この場合は右足)の横、頭の真下付近にあります。ここより後ろにパックがあると、振り抜く遙か以前にスティックのしなりが解消されてしまい、ブレードにパックが乗る時間のないままにパックがスティックから離れてしまいます。氷にスティックが当たる音ばかりが大きなシュートの原因はだいたいこれです。反対にここより前にパックがあると、インパクトの瞬間にブレードがトップハンドよりも前に出てしまっていることになるのでスティックをしならせることができなくなるか、もしくはさっきと同様にしなりが遙か以前で解消されることになります。

さて「スティックをしならせるためにパックの10cmくらい後ろの氷を叩け」とは昔からよく言われていることですが、私はあまりこのコツに感心しません。ほとんどの場合、初心者はこのアドバイスでパックの遙か後ろの氷をブッ叩き、挙げ句の果てにパックをすくい上げようとするものですから、しなりはとうの昔に解消されるはスティックはパックにかすらないはであまりいいことはありません。私はむしろ「パックを斜め下にぶち込む感じで打て」と言っています。こうすれば自然とパックの少し後ろの氷を叩き、しかもフォロースルーがすくい上げになりにくいからです。

しなりしなりといいますがそれはあくまで補助的な力に過ぎません。一番重要なのは、やはり振り抜きの速さとそれを効率よくパックに伝えることです。次に両手前腕部と体の間の空間(水色に塗った部分)に注目して下さい。これは他のシュートにも共通していることなのですが、これからパックを加速しようというときに、両手前腕部が体から離れていることが大事なのです。この水色の隙間を使ってトップハンドを脇を閉めるように腰のやや上に引きつけ、ボトムハンドをシュート方向に押し出す「ボトムハンドを支点、トップハンドを力点としたテコの動作」が行われるのです。もしこの段階でトップハンドの前腕部がすでに脇の下に固定されてしまっていたとすれば「トップハンドを支点にした振り子運動」になってしまい、テコほど速くスティックを動かすことができません。

というわけで、あとはスティックの振りのスピードが最大の時にパックをきちんとスティックに乗せてあげていればいいのです。これについてはQ26を参照して下さい。

最後に筋トレについてです。シュートに使う筋肉は上体であれば大胸筋、広背筋、前腕、上腕の各筋肉が考えられます。重いウェイトをゆっくり上げるトレーニングをしても素早い加速動作とは無関係なので、ある程度最大筋力を上げたら軽めのウェイトを素早く動かすトレーニングをしましょう。そして、筋トレにばかり頼らずに正しいフォームでパックを飛ばすテクニックを身に付けて下さい。本場の小学生や中学生は明らかに大人よりも筋力がなくても良いシュートを打ちます。これは正しいテクニックを身に付けているからです。あのアル・マキニスが子供の頃、ひたすら陸上でシュート練習をしていたというのは有名な話です。正しいフォームで繰り返し練習することが何よりも重要なのです!

一番良いのは少し重いスティックやパックを使ってひたすらシュートのフォームを作ることでしょう。しかし重すぎるスティックやパックを使うと体を壊すので特に子供には危険です。また、どんなに速いシュートでも狙いが定まっていなければ無意味ですので、正確に打つことこそを忘れずに!
体と味方のキーパーを壊さない程度に修行して下さい。

それでは。