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ヘローキィのチェコ&スウェーデンホッケーツアーその2 (2004年04月02日~)

再会!

チェコは日本のホッケーと縁が深く、私も古河電工でゴーリーを教えていたときにヴェイボダ、カベルレコーチ、ガルドン選手などにお世話になってました。日本では古河電工も日光アイスバックスとなり、ずいぶん過去のことのような気がしていたのですが、彼らはまだまだ現役です!オタカー・ヴェイボダコーチ(以下オタ)はエクストラリーグのコーチなどを経て現在1部リーグ・ベロウンを率いています。オタはクラドノ、スパルタという名門チームでプレーし、世界選手権優勝も経験しているチェコの英雄級のプレーヤーでしたが、コーチとしても指導力を発揮、ベロウンを1部リーグプレーオフに導きさらに評価を高めています。ベロウンの試合を見に行ったあとに久しぶりにオタと再会しました。春名がUHLでプレーしていることなどを興味深く聞いていました。

さらに日本のファンには馴染み深いガルドン選手、世界ジュニア選手権でMVPに輝き、NHLにもドラフトされ、古河時代は小柄な体から繰り出される驚異的なプレーで日本のホッケーファンを魅了しました。彼は帰国後エクストラリーグ(クラドノ)に復帰して大活躍をしています。私が見に行った試合でもチェコの巨漢に囲まれながら奮闘、素晴らしいアシストを決めていました。が、試合は土壇場で逆転負け。試合後「あのアシスト良かったよー!」と声をかけると「ウーン、ソレダケ、、、」と日本語で落ち込んでいました。また「ニッコウハ、ドウナリマシタカ?」とバックスのことを聞いてきたので経営難が続くことを伝えると「ソウデスカー、オカネナイデスカー」と心配していました。ガギーにはまだまだ頑張ってもらいたいです、、、

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プロリーグの構成

プロリーグは14チームからなるエキストラリーグを頂点としています。その下には1部リーグ14チーム、3地域に12チームずつ計36チームの2部リーグ、3地域に31チームの地域リーグ(3部リーグに相当)、その下に地域リーグ入りを争う地域選手権(4部リーグに相当)があります。これら4部のプロリーグがそれぞれ優勝と入れ替え戦をかけてチェコ全土で戦っています。人口約1000万人、高度の面積は北海道ほどしかない国家に100チームを超えるプロが存在するわけですから、大変な懐の深さであることが分かります。

アリーナと応援

プロチームのアリーナの規模はエクストラで5000-10000人、1部リーグで3000人、2部リーグくらいになると観客席すら怪しいという感じで、特筆すべきことが立見席の存在です。チェコのアリーナではたいてい片側の観客席が立見席になっており、サッカーの応援のごとく強力なサポーターが試合中に歌を歌いまくる光景を目にすることができます。応援の内容はかなり熱くチェコの放送禁止用語を全員で合唱なんていう過激な光景が繰り広げられています。昨年はスパルタプラハで爆弾仕掛けたなんていう騒ぎがあったらしく、入り口ではボディチェック(当たるやつじゃなくて調べるやつ)が行なわれ、試合中も機動隊が常時待機しています。

そういえば日本のホッケーのサポーターがJリーグの応援をパクっているとかいう議論を2chあたりで目にしたことがありますが、鳴り物入りで歌いながら応援するのはヨーロッパのスポーツ応援の基本的スタイルであり、パクったとかいうほどのことではないのです。逆に考えるとアリーナで音楽をかけて客を乗らせるっていうのは結構北米特有のスタイルなんですね。ちなみに伝統チーム、スパルタプラハではチアリーダーがお立ち台の上で踊っていました。

チケットが安いのにもビックリさせられます。NHLなんか100ドルを越えるのがざらにあるのに、チェコでは数百円もあればエクストラリーグの観戦ができます。もともと日本の3~4分の1と物価が安い国ですが、「チェコではビールとホッケーチケットの値上げをしたら暴動が起きる」と言われるほど身近な娯楽なのです。

チェコホッケーを支えるもの

さて、プロホッケーの概要は前回お伝えしました。これだけのプロチームを支える構造はどうなっているのでしょう? 町の体育協会が母体となっているチームもあるようですが、基本的にはプロチームはスポンサーを募って経営するいわゆるクラブチームの形式をとっているものが多いようです。例えば名門クラドノは共産主義体制のころから町の主工業である鉄工所が親会社になり運営していたようです。現在スラヴィアプラハはSKANSKAという建設の会社がメインスポンサー。またリーグ自体もスポンサーをつけて運営されており、今年はTipSportsというスポーツを対象にした賭けの会社(Jリーグのtotoみたいなもんです)がリーグスポンサーになっています。ってブッキング会社がリーグのスポンサーってすごくないですか??

その他もろもろの会社が自分の町のチームを支えるために出資しているため、ユニフォームはもはやどこにチームのエンブレムがあるのか分からないくらい広告が貼られ、それにとどまらずリンク上にまで広告があふれ出ています。リンク上って言ってもボード広告じゃなくてリンクにバンバン広告があるんです。もうフェイスオフサークルの中からコーナーまで広告の方がブルーラインとかより全然目立って見えます。こりゃ日本から来た選手は目が慣れるまで大変でしょう、、、

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実はプロ、と言ってもホッケーだけで食べていけるのはだいたい1部リーグくらいまでで、2部リーグ以下は昼間に仕事をしながら練習と試合をするというセミプロのチームが多いということです。ただし、プラハのような大都市を除けば2部3部でも町唯一のプロというチームは多く、スポンサーや観客に恵まれている場合も多いようです。

昼間やオフシーズンに仕事しながらプロホッケー選手、このようなチームの形態はこれから日本でも増えてくるでしょう。日本のホッケーが生き残っていくためには「プロ化」「メジャーになる」「高収入」という甘美な言葉ではなく、「好きなことをして生きていくために全力で頑張る」という現実的な選択しか残されていないからです。