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ヘローキィのチェコ&スウェーデンホッケーツアーその1 (2004年04月02日~)

2004年、筑波大男子ホッケー部のコーチを退任して一時的に暇になったヘローキィは世界のホッケーを訪ねて、一昨年のロシアに続いて2月3日から25日までチェコとスウェーデンに行ってきました。チェコもスウェーデンも古くからのホッケー強国として知られています。近年ではリレハメルオリンピックでのスウェーデン、長野オリンピックでのチェコの優勝、ピーター・フォースバーグやドミニク・ハシェク、ヤロミール・ヤーガーなどのスーパースターの輩出と、新たな黄金時代を迎えています。

日本では北米やロシアよりもさらに情報の少ないチェコ、スウェーデンホッケーの秘密を探るべく、ヘローキィが潜入しました!

チェコのプロホッケー

チェコホッケーの歴史はとても古く、1908年に現在の国際アイスホッケー連盟の前身である「国際氷上ホッケー連盟」が創設された当時からのメンバーでした(当時はボヘミア)。国内の最高峰リーグであるエキストラリーグの名門、スパルタ・プラハとスラヴィア・プラハの歴史は100年を越えます。世界選手権でも12回の優勝を誇り(ボヘミア時代2回含む)、ソ連のホッケーもチェコから多くを学んだといわれています。オリンピックでの悲願の優勝は長野(1998年)で達成され、その勝利を題材にしたオペラが上演されるほどの伝説となりました。

日本との関わりも深く、古くはカベルレやノヴァック、最近ではガルドンらのトップクラスの選手が古河電工や雪印でプレーしているほか、プロシェックやヴェイボダなど素晴らしいコーチが指導をしています。チェコのコーチングのレベルも当然世界的で、特にコストカ教授の確立した教育システムは有名で、国際アイスホッケー連盟から英語に翻訳されて発売されています。

プロリーグの構成

プロリーグは14チームからなるエキストラリーグを頂点としています。その下には1部リーグ14チーム、3地域に12チームずつ計36チームの2部リーグ、3地域に31チームの地域リーグ(3部リーグに相当)、その下に地域リーグ入りを争う地域選手権(4部リーグに相当)があります。これら4部のプロリーグがそれぞれ優勝と入れ替え戦をかけてチェコ全土で戦っています。人口約1000万人、高度の面積は北海道ほどしかない国家に100チームを超えるプロが存在するわけですから、大変な懐の深さであることが分かります。

アリーナと応援

プロチームのアリーナの規模はエクストラで5000-10000人、1部リーグで3000人、2部リーグくらいになると観客席すら怪しいという感じで、特筆すべきことが立見席の存在です。チェコのアリーナではたいてい片側の観客席が立見席になっており、サッカーの応援のごとく強力なサポーターが試合中に歌を歌いまくる光景を目にすることができます。応援の内容はかなり熱くチェコの放送禁止用語を全員で合唱なんていう過激な光景が繰り広げられています。昨年はスパルタプラハで爆弾仕掛けたなんていう騒ぎがあったらしく、入り口ではボディチェック(当たるやつじゃなくて調べるやつ)が行なわれ、試合中も機動隊が常時待機しています。

そういえば日本のホッケーのサポーターがJリーグの応援をパクっているとかいう議論を2chあたりで目にしたことがありますが、鳴り物入りで歌いながら応援するのはヨーロッパのスポーツ応援の基本的スタイルであり、パクったとかいうほどのことではないのです。逆に考えるとアリーナで音楽をかけて客を乗らせるっていうのは結構北米特有のスタイルなんですね。ちなみに伝統チーム、スパルタプラハではチアリーダーがお立ち台の上で踊っていました。

チケットが安いのにもビックリさせられます。NHLなんか100ドルを越えるのがざらにあるのに、チェコでは数百円もあればエクストラリーグの観戦ができます。もともと日本の3~4分の1と物価が安い国ですが、「チェコではビールとホッケーチケットの値上げをしたら暴動が起きる」と言われるほど身近な娯楽なのです。

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ホッケーのレベル

さて、肝心のプレーのレベルですが。エクストラリーグはNHL上がりの選手やNHLドラフティがごろごろしているので当然レベルは高かったです。ロシアのスーパーリーグと同じくらい、北米で言うならマイナーリーグのトップクラスですね。面白いのはほとんど外国人選手がいないということ。いたとしても隣国であるスロバキア人が少しいるくらいで、これだけ豊富なプロチームを国産選手でまかなっているというのは驚異的です。

大きな理由は賃金の低さです。他のヨーロッパ諸国に比べて賃金が低いチェコでわざわざプレーしたがる外国人選手はあまり多くないのです。そしてさらに大きな要因として、チェコホッケー自体がとても国内リーグを重視する傾向が強いことが考えられます。古い歴史を持つチェコでは「国内リーグが一番」という意識がいまだに強く、NHLに移籍する選手たちを単にスター選手としてではなく「金の誘惑に負けた」ととらえる報道も多く見られるようです。実際にNHLで活躍できないと見るや速攻帰ってくる選手も多く、自国のホッケーへの愛着は相当強いようです。

1部リーグでもかなりレベルは高く、日本代表クラスでないと常時活躍というわけにはいかないと思われました。私が目にしたのは2部リーグまでですが、2部リーグになると、かなりレベルは落ちてきます。低賃金、語学のハンディなどを乗り越えられれば日本人でも活躍の場はあるのではないでしょうか?しかし2部リーグとは言ってもついさっきまでエクストラでやってましたなんてプレーヤーがひょっこり来たりするのでその実力は侮れません。