Book Review Title

「ジーコの考えるサッカー(レベル1~3)」(ジーコ著、NHK出版)

白いペレ

今日はブラジルで「白いペレ」と呼ばれた、サッカーの名選手ジーコの著書「ジーコの考えるサッカー(レベル1~3)」を紹介します。 ジーコはブラジル代表として輝かしい活躍をして引退後、当時Jリーグ鹿島アントラーズの前身チームであった住友金属に入団。徹底したプロフェッショナリズムと素晴らしい技術でチームを、いや日本のサッカーを改革しました。ナショナルチームの監督経験はないものの、フランスW杯ではブラジル代表のテクニカルディレクターでした。現在では鹿島アントラーズの総監督を務めています。

しかし、まともなクラブハウスも備わっていない、今と比べれば草サッカーにも等しい環境にジーコを呼んだ、いや呼んでしまった、住金の人たちって一体... すごい熱意があったか、そうでなければジーコのすごさを本当は良く知らなかったか、どちらかでしょう。とにかくそこで日本のサッカーを変えてやろうと奮闘しだしたジーコも、相当熱い人です。

丁寧な質疑応答

ジーコは既にいろいろな著書を出しています。この「考えるサッカー」は日本の中高生からのサッカーに関する疑問にジーコ自らが回答するといった、まあHockey Lab JapanのQ&Aが比較できないくらい豪華になった感じの本です。この中高生からの質問というのがとても素朴です。
「「1対1」の局面でどうしても相手選手に勝ちたいのですが」なんていうのはまあ単に素朴なだけですが、
「ジーコ選手は試合中に気を抜いたことがありますか?」なんて... おいおい、そんなこと聞くかっちゅう感じの質問のオンパレードです。ジーコはこれらの質問に、とても丁寧に答えてくれています。指導者が誠意を持って質問に答えるというのは大変重要なことです。

「そんな質問はまだ早い」とか「生意気なこというな」とかで済ませてしまう指導者もよく見かけますが、それは自分の無能さをさらけ出しているに過ぎません。 ジーコは、またときにとてもシンプルで、ある意味身も蓋もない回答をします。

「天性の才能がなければジーコのような選手にはなれないでしょうか?」という質問には「たぶんそうだと思います」とはっきりと答えています。そして「運も大事だ」と語ります。考えてみれば当たり前です。「才能や運なんてなくても、努力すれば、みんなにチャンスがある」みたいな甘味料たっぷりの虚言でごまかさないところに彼の誠意を感じます。

でも別の質問への回答で「才能がなくても成功した人」の実例を挙げ彼らに共通の特徴として「勉強し、努力できる才能があった」ことをあげています。才能がないことを理由に諦めるやつは、努力する才能がない、ということです。まさに言い訳や泣き言の付け入る隙を与えない名回答です。

「もっとも役に立つ練習というのがあるのでしょうか?」というどうしようもない質問にさえ、 「そのトレーニング理論が科学的に正しく、選手が誤った知識をもったり、誤った技術を身に付けなければ、およそすべての練習が「もっとも役に立つものだ」と私は信じています」と、見事に切り返しています。

ジーコは目新しい練習メニューや、気休めのメンタルトレーニング、「外国では」という魔法の言葉でなく、自分の頭で考え、ロマンではなく論理で道を切り開け!と力強く語ってくれているのです。 この本を3冊制覇すれば、Hockey Lab JapanのQ&Aの回答が、いかにジーコの影響を受けているか... が、ばれてしまいますね。

ジーコの考えるサッカー〈LEVEL2〉―ゲームに生かせる実践Q&A