Book Review Title

「スポーツ指導の名言」(舟橋明男、福田光洋著、黎明文庫)

明けましておめでとうございます。新春マニアック書評第1弾は 「スポーツ指導の名言」(舟橋明男、福田光洋著、黎明文庫)です。

私は書評の中でしつこく、指導者には技術的知識以前に「人とコミュニケーションをとる」テクニックが必要である。と述べてい ますが、実際にはなかなかそのような勉強はしづらいものです。書評で紹介してきた本の多くも、やはりそれなりのボリュームがありますし、日々の忙しい生活 とコーチングの中で完読するのは骨が折れるという人も多いと思います。もっとこうパラパラスーッと読める本はないんかい?というご要望は別になかったのですが、それに応えているのがこの本です。

指導をするにあたって必要なことは?

この本は主に子供を中心とした指導をするときに、指導者としてとても重要な知識を、キーワードごとに1ページから、多くても4ページで簡潔にまとめています。これなら忙しくても毎日少しずつ読み進んでいくことができるはずですし、何かの機会にフッと読み返すにも適しています。逆に言うと、このくらいの努力ができない人には、はっきり言ってコーチは無理です。

内容のほうはスポーツ生理学からチーム作り、安全対策、コミュニケーションまで多岐に渡っていて、とても充実しています。

例えばこのようなこと...

「痛みは一時停止のサインだよ」では、痛みを我慢して運動を続けることの危険性を説き、
「中学生、持久走で心臓強化」では成長に応じたトレーニング内容を紹介します。
「横腹が痛めば、食べ物を点検し」 「冷水の一杯が救命主」はちょっとしたスポーツ栄養の話。

「カタカナをしゃべっているけど、意味知らず」
「流行にふりまわされて、ダメにし」
「ワンマンが良いのはチーム発足時」
「出る杭を伸ばせ」
「下手の長説明」
なんかは指導者としてハッとさせられる項目です。

この本を一冊読んでみて「分かりきったことだ。簡単でつまらん」と言える指導者はすごい人か、よほど自分を省みられない大バカ者指導者のどちらかでしょう。

だが一体、このクサさは...?

それにしてもこの紹介したキーワードたちがなんかクサい。なんていうか5・7・5風で、ちょっと無理やりで、いや、なんていうか垢抜けないのです。ほとんどキーワードと内容が無理矢理つなげられたのもあります。

「ロマンあり、ドラマあり、スポーツに感激の涙あり」なんて、「スポーツはロマンだ」とか大げさに始まり、最終的には「試合をする相手は自分たちのレベルと試合の目的に合わせてよく選びましょう」っていうオチだし。

なんでやねんと思っていると表紙にさりげなく「スポーツ指導いろはカルタ」改題って書いてありました。なるほど... キーワードが「いろはにほへと」で並んでいました...。