Book Review Title

「トルシエ革命」(フィリップ・トルシエ/田村修一、新潮社)

圧倒的な指導力!

ワールドカップの予選組み合わせも決まったということで、今回はいまだに私の注目するサッカーコーチ、フィリップ・トルシエの「トルシエ革命」をご紹介します。ちょっと前の解任論争はどこへやら...ワールドカップを半年後に控えた今、トルシエの指導力に疑問をはさむ余地はほとんどありません。いろいろ言われながらも彼はこの国のサッカーのレベルを今までにないほど高め、結果を出してきました。

私が日記の中でもたびたび彼を絶賛してきたように、彼のエキセントリックな言動はかなり計算されていて、結局選手もプレスも相当上手いことコントロールされていたようです。そんな彼の指導哲学をまとめたのがこの一冊です。これはサッカーに限らず、現代の指導者に求められるものは何かを示す良本だと断言できます。

トルシエの哲学とは

彼の哲学は要約すると、以下になります。

現代のサッカーでは選手個人の能力よりも監督のコンセプトにあった人選が必要である。なぜなら現代のサッカーは60%がシステム、個々の能力が30%、そして残り10%が運で決まるからだ。
これはどのチームスポーツでも同じです。個人の能力だけで勝利できる時代はとっくの昔に終わっています。ベストのタレントを集めても勝つチームにはならないのです。タレントを生み出すことばかりに集中していると、そのうちにタレントも生まれなくなるみたいです。サッカーにおけるブ○ジル、ホッケーのカ○ダですね。

サッカーの進歩はピッチの上よりもピッチの外に多くある。強いチームを作るには現場での指導だけでなく環境作りが重要だ。
これも素晴らしい示唆に富んでいます。競技力の強化は技術力の強化だけでなくマネージメントの強化なのです。

サッカーは成熟した大人のスポーツであり、チームのコンセプトの中で自由に自己を表現できる強い個性と人間性が求められる。
強く、さまざまな逆境を経験した人間こそが強いチームを作るのです。甘やかされ、強いプレッシャーから守られてきた人間はばかりでは強いチームを作れないのです。

強いチームには「勝つための戦い方、負けないための戦い方」を実戦を通して学んだ結果の「リアリズム」が備わっている。
技術力が上がっただけでは試合には勝てません。現実的な、負けない、したたかな戦い方を身に付けるためには、高いレベルの戦いに自ら身を投じて経験を積むしかないのです。

詳しくは本を読んで欲しいのですが私は個人的にはこの一年筑波大チームを指揮する上で非常に参考にさせていただきました。筑波の人は分かると思うけど...。次回はトルシエつながりで彼のパーソナルマネージャー、ダバディさんの著書を紹介... ウソです。読んでません。なんでしょうか?お楽しみに。