Book Review Title

「失敗のメカニズム」 (芳賀繁著、角川学芸出版)

えー、アクセス解析を見ていると意外にも日記コーナーの人気が高いことが分かり、調子に乗って書評を続けることにしました。 と言っても、コーチングのことではなく一般的な本の書評です。 本当の暇つぶしに読んでください。
で、第一弾はこれです。

ヒューマンエラー学とは?

いきなり何のことやいって感じですが、人間とは失敗をする生き物です。うっかりインロックから航空機の事故まで程度に差はあれ、人生や歴史は失敗の歴史であると言っても過言ではありません。本書は「失敗学」いや「ヒューマンエラー学」を駆使して、失敗の本質と失敗を防ぐ方法を解き明かしてくれます。

この本で面白いと感じたことはいくつかありますが、中でも失敗の原因を個人の資質とするか、人間を取り巻くシステムとするかの論争はなかなか面白いものがありました。 現代社会は基本的に個人の責任を追及する方向で社会制度が作られてきたということもあって、大抵の失敗は個人に還元されがちです。

「いろいろ言っても最後は個人の能力だ」「ようするにあいつは要領が悪くて、ドジなんだ」とは、いろいろな場面で使われる言葉です。 しかし本書はあえて「組織風土」にまで踏み込み、失敗を起こしにくくする組織の風土を確立すべきだと唱えるのです。 なるほど...と結局コーチング的に考えてしまったのですが、もっともです。

あとは、失敗を引き起こしにくくするための視覚的デザイン(台所のコンロの魚焼きグリル用のノブの配置とか)、命令系統の統率、なんかも非常に興味深いものでした。 だから試合中のコミュニケーションは単純で明確であるべきなんですよねー。

「急げば不正確になる」 っていうのもやはり避けがたい事実、あーこれもスポーツの世界で必要なことだ... なになに、上司の性格と部下のミスに関連性がある... はっ! これはコーチングの書評と変わらないではないか!! でもまあこんなもんです。私の読書は。

しかし...「日本では毎年「不慮の事故および有害作用」で、約4万人の命が失われている。(中略)なかでも、15歳から19歳の間では、ほぼ半数が事故で死ぬ」で幕を開ける本書の最後が 「失敗を恐れて何もしないところには、達成もなければ安全もない。失敗は成功の母であるから」でまとめられると... ちょっとブラックに感じるのは私だけではないでしょう。とにかく分かりやすくて面白いので一読をお勧めします。